新型コロナウイルス感染症をきっかけに、退職せざるを得なくなった方も多いのではないでしょうか。失業保険には、自己都合退職に対する特例が設けられています。この記事では、コロナに伴う自己都合退職に対する失業保険の特例について、概要や対象者、申請方法を解説します。
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会社都合退職と自己都合退職における失業保険の取り扱いの差

退職には、大きく分けて会社都合退職と自己都合退職の2種類があります。失業保険の取り扱いは、どちらの要件で退職するかで異なるので注意が必要です。
以下の3つのポイントで、取り扱いの違いを見ていきましょう。
- 受給資格の要件が異なる
- 自己都合退職には給付制限期間が設けられている
- 支給期間に差がある
受給資格の要件が異なる
失業保険の受給資格は、会社都合退職と自己都合退職で以下のように違いがあります。
- 会社都合退職:退職前の1年間に通算して6ヶ月以上雇用保険の被保険者であること
- 自己都合退職:退職前の1年間に通算して12ヶ月以上雇用保険の被保険者であること
会社都合退職の場合は退職前の半年間被保険者であればよいものの、自己都合退職は1年間以上の被保険者の期間が必要になるので、両者を比べると自己都合退職の方が受給資格が厳しくなっています。
自己都合退職には給付制限期間が設けられている
失業給付金が支給されるタイミングは、会社都合退職と自己都合退職で異なります。会社都合退職の場合は、申し込みから最短7日後には支給を受けることが可能です。
一方、自己都合退職の場合は、給付を受けられない給付制限期間が3ヶ月設けられています。そのため、支給されるタイミングは会社都合退職よりも3ヶ月遅くなるので、その間の資金繰りが難しくなるかもしれません。
支給期間に差がある
失業保険の支給期間は、雇用保険の被保険者であった期間や退職時の年齢によって決められるので、利用者それぞれで差が出てきます。
ただし、支給期間の下限と上限を比べてみると、会社都合退職と自己都合退職では大きな差があるので注意が必要です。
会社都合退職は90~330日、自己都合退職は90~150日となっており、自己都合退職の方が支給期間は短くなっています。当然、支給期間が短いほど支給額も少なくなるので、十分な給付を受けられない場合もあるでしょう。
コロナ理由の自己都合退職に対する失業保険の特例

失業保険には、新型コロナウイルスが原因で自己都合退職した場合の特例が設けられています。特例に適用されると、どのようなメリットを得られるのでしょうか。
コロナ理由の自己都合退職に対する失業保険の特例のポイントは以下の4つです。
- 失業手当の給付日数が60日間延長
- 特例適用後の給付日数
- 自己都合退職でも待機なしですぐに手当が給付される
- 受給期間が最大3年間延長可能になる
失業手当の給付日数が60日間延長
コロナ理由で自己都合退職になった場合、特例によって給付日数が60日間延長されることになりました。
給付日数が長くなる分、給付を長く受けられるので、これまでよりも失業給付を多く受け取ることができるようになります。
注意点として、以下の条件に当てはまる場合は30日間の延長です。
- 35歳以上45歳未満で給付日数270日の場合
- 45歳以上60歳未満で給付日数330日の場合
特例適用後の給付日数
特例が適用された後の給付日数は、被保険者期間と年齢によって決められています。具体的に給付日数が何日になるのかを下記の表で確認していきましょう。
被保険者期間 | 1年未満 | 1~5年未満 | 5~10年未満 | 10~20年未満 | 20年以上 |
30歳未満 | 150日 | 150日 | 180日 | 240日 | – |
30~35歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 300日 | |
35~45歳未満 | 210日 | 300日 | |||
45~60歳未満 | 240日 | 300日 | 330日 | 360日 | |
60~65歳未満 | 210日 | 240日 | 270日 | 300日 |
自己都合退職でも待機なしですぐに手当が給付される
前述した通り、自己都合退職の場合失業給付が支給される前に、3ヶ月の給付制限期間が設定されていました。
特例によって、本来一般受給資格者と見なされる自己都合退職を「特定理由離職者」とし、給付制限期間なしで、すぐに手当が支給されます。
受給期間が最大3年間延長可能になる
新型コロナウイルス感染症によって30日以上働けない場合には、働くことができない期間を受給期間に加えられるようになりました。
プラスできる期間は最大3年とされており、本来の受給期間である離職日から1年に加えることで、受給期間が最大4年となります。
ただし、受給期間と給付日数は異なるので注意が必要です。受給期間とは給付を受けられる期間のことで、手当をもらえる日数である給付日数とは違います。受給期間が延長できるからといって支給額が増えるわけではないことを覚えておきましょう。
コロナ理由の自己都合退職の特例に該当する対象者

コロナ理由の自己都合退職の特例ですが、自分が特例に該当するのか気になっている方も多いでしょう。
具体的な要件を解説しますので、利用を検討している方は確認してみてください。
特例の対象者となる3つの条件
厚生労働省・労働局・ハローワークが発表した「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応した給付日数の延長に関する特例について」では、特例の対象について3つの条件を示しています。
離職日 | 対象者 |
緊急事態宣言発令以前 ~令和2年4月7日 ~令和3年1月7日 |
離職理由を問わない(全受給者) |
令和2年4月8日~令和2年5月25日 令和3年1月8日~緊急事解除宣言日 |
・特定受給資格者:倒産・解雇等に伴う離職 ・特定理由離職者:自己都合離職者、更新を希望していたものの契約が更新されず離職した者 |
令和2年5月26日~緊急事態解除宣言日後 | 新型コロナウイルス感染症の影響により離職を余儀なくされた特定受給資格者及び特定理由離職者(雇止めの場合に限る) |
また、積極的に求職活動を行っている方が対象であり、対象にならない場合も示しています。
- 所定の求職活動がないことで失業認定日に不認定処分を受けたことがある場合
- やむを得ない理由がなく、失業認定日に来所しなかったことにより不認定処分を受けたことがある場合
- 雇用失業情勢や労働市場の状況などから、現実的ではない求職条件に固執される方
- 正当な理由なく、公共職業安定所の紹介する職業に就くこと、指示された公共職業訓練を受けること、再就職を促進するために必要な職業指導を拒んだことがある場合
特定受給資格者として扱われる離職理由
新型コロナウイルス感染症による離職については、以下のような理由がある場合に特定受給資格者と見なされ、特例に適用されます。
- 同居の家族が新型コロナウイルス感染症に感染したことなどにより、看護または介護が必要となったことから自己都合離職した場合
- 本人の職場で感染者が発生したこと、または本人もしくは同居の家族が基礎疾患を有すること、妊娠中であることもしくは高齢であることを理由に、感染拡大防止や重症化防止の観点から自己都合離職した場合
- 新型コロナウイルス感染症の影響で子(小学校、義務教育学校※小学校課程のみ、特別支援学校※高等学校まで、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園などに通学、通園するものに限る)の養育が必要となったことから自己都合離職した場合
コロナ理由の自己都合退職にともなって失業保険を申請する方法
特例の要件に該当する場合、どのように失業保険を申請すればよいのでしょうか。失業保険の申請の流れと注意点をおさえた上で、申請を進めていきましょう。
申請の流れ
失業保険の申請は、管轄のハローワークで行います。申請には離職票が必要ですが、会社に離職票を渡す義務はないので、早めに離職票を送ってもらうように手配しておきましょう。
離職票を用意できたら、以下のような流れで手続きを進めます。
- ハローワークに離職票を持参し、求職の申し込みを行う
- ハローワークの雇用保険説明会に参加し、雇用保険受給資格者証と失業認定申告書をもらう
- 求職活動に取り組み、説明会でもらった書類を提出し、基本手当の申請が完了
特例に関しては、対象者についてハローワークが処理を行うので、別途申請を行う必要はありません。
待期期間中にアルバイトやパートするのはNG
ハローワークが受給資格などを審査する待期期間は、アルバイトやパートなどで収入を得るのはNGです。
収入があると見なされると、審査が長引いて待期期間が延びることもあるので、調査が終わり受給が決まるまで待機するようにしましょう。
コロナによる自己都合退職には失業保険の特例あり

新型コロナウイルス感染症に伴う自己都合退職に対して、失業保険の特例が設けられました。対象になると、給付日数や受給期間の延長、給付制限期間なしでの受給などの特例が適用されます。
特例の対象となる条件や申請の流れを理解して、コロナ理由で自己都合退職された方はぜひ活用してみましょう。